ミニアホ毛三人組が会話をしているようです。
                「ぺるあっくってなに!?」
                「なーにー!?」
                 ばたばたばた、という効果音を響かせる、ほどには体重が重くない小さな幼子。そんな二人が、正確にはたたたという足音を響かせながら、大部屋に現れた。
                 ねえねえねえ。そんな大声が響いた先にいたのは、幼くも見えるがどこか虚ろにも見える表情のうらはだ。
                 ぺるあっく、頭の中で繰り返す。ぺるあっく、ぺるあっく。何度か繰り返してから、ああ、と小さく頷いた。 
                「……ペアルック?」
                「そう!」
                「ぺあるっく!」
                 なにがあったのかは知らないが、どうやらこの二人にペアルックという単語を教えた人物がいるようだ。幼い子供らしく、知らない単語には興味津々。さらに好奇心旺盛な二人だ、気になって気になって仕方ないという顔だ。
                 きらきらと光る二人の顔を見ながら、うらはは少しばかり頭を傾げる。どう答えればいいだろうか、と思案する。下手に分かりづらい言い回しは出来ないし、勘違いもさせたくはない。時々辛辣なところをみせるうらはだが、やはりこの幼い双子にはどこか弱い。「優しくしたくなる」とは、兄の鉄
                    へぼんやりと呟いた言葉だ。
                「ペアルックっていうのは……」
                「ぺあるっく!」
                「っていうのは!?」
                「おんなじお洋服着てるってこと」
                 おんなじ、おようふく。
                 うらはの言葉をたどたどしく繰り返す。そうしてからお互いの顔を見て、鏡合わせのように首を傾げた。
                「かるんと、さっぴー」
                「おなじおようふく?」
                「でも、ちがう?」
                 今度はうらはの方に顔を向ける。どうなんだろう、という表情。その反応に改めてうらはは二人を見た。
                 カルンとサッピー。二人は似ているかと言えば似ていない。
                 いや、顔の造形という点では似ている。顔だけなら見分けはつかないだろう。髪型は鏡合わせだから、同じと言える。服の見た目も、大体同じだ。
                 だが、やっぱり似ていない。いや、似ているけど同じではない。
                 カルンにのみある、獣の耳に鳥の翼。人外だとはっきり分かる容姿だ。
                 対してサッピーにそれらはない。人外の血が混じっている、とは言われても分からないほどに、人外としての特徴がない。
                 人外と人間の血が混じった二人。それでも人外の特徴は両方に出ることはなかった。原因はわからないが、二人が気にしている様子もないから別にいいのだろう。
                 さて、そろそろ二人の問いに答えなければ。
                 うらはは思い直す。
                 二人の洋服も、彼女たち同様似ているけれど同じではない。カルンには翼があるが、サッピーには翼がない。その違いが服装に表れている。
                 カルンの洋服だけは翼を出しておくために、背中が開いている。そしてその上から羽織るようなマントのようなもの。
                 それに対してサッピーの洋服には背中が空いてないし、マントのようなものもない。マントの代わりのようにフードがついているが。
                 だが正面から見れば同じと言える、そんな服装だ。
                 うーん、再び首を傾げてから、うらははぽつりとこぼした。
                「同じ、かな。カルンとサッピーはペアルックだと思うよ」
                「ほんと!?」
                 うらはの答えに、二人の声が重なる。とても嬉しそうな声。表情もきらきらと輝いていた。
                 良かった、答えは間違ってなかった。うらはは内心ホッと胸を撫で下ろす。流石にこの幼い双子の顔を曇らせたくないから、とは言わないけど。
                「さっぴーと、かるん! ぺあるっく!」
                「ぺあるっく! やったー!」
                 きゃっきゃと大部屋に響く二人の声に、うらはは思わず笑みをこぼした。やっぱりこの二人は可愛い、なんてね。