光降る森
                 ――僕らの目の前には今、光り輝く森が広がっていた。
                「な、にこれ……」
                 驚いて目を見開いている
                    
                「わー凄いねえ」
                「本当に、凄い……。あ、光は空から降ってきてるんだ」
                 目線を上に動かした舞弥につられて空を見れば、ふらふらと揺れながら光は落ちてきていた。なんだっけ……ほ、ほたる? とか言う生き物に似ているかもしれない。確かこの前の世界で、珍しい生き物なんだと紹介してくれた。
                 そんなことをぼんやりと考えていれば、舞弥はいつの間にか森の中に入っていた。
                「一人じゃ危ないよ?」
                「どうせあんたもすぐ来るでしょ」
                 そんな言葉を返される。仕方ないなあ、なんて言いながら歩き始める。
                 少し歩いた先は開けていて、そこで舞弥はぼんやりと空を見ていた。光に魅入られた、ようにすら見えた。
                「いやー本当に凄いわ……雪みたいなものなのかな、これ……」
                 そんな姿を少し離れたところで見ていると、なんとなく、ぼんやり彼女が光に滲んだ気がした。
                「ねえ」
                「ん?」
                 思わず声をかけたのは、なんでだったんだろう。なんとなく、消えちゃうんじゃないかって、思ったせいかもしれない。
                「そろそろ次の世界、行く?」
                「え、他のところ探索しないの?」
                「だって森抜けるのも大変そうだよ」
                「あー確かに……」
                 仕方ないか、とこちらに彼女が寄ってくる。その掌を握れば、ちょっと驚いたような表情が見れた。なんとなく、満足。
                 魔法を使いながら、ちらりと空を見上げる。そこからは相変わらず光が降ってきていた、けど。
                
                 彼女は、誰にも渡さない。
                
                 そう心の中だけで呟いて、思わず笑ってしまった。
            
巡々三十題「光降る森」